雄大な海に包まれて磯の香りも心地よく、しばし時を忘れたゆるり時間。そんなひとときを過ごしたいなら瀬戸内海に浮かぶ芸予諸島のひとつ、呉市の大崎下島にある御手洗地区を訪れてみましょう。
大崎下島へは竹原港からフェリーで行くことができます。または呉市の本土から橋と島が連なる安芸灘とびしま海道を通って車で行くこともできます。
島の東部にあるのが御手洗地区です。江戸時代より潮待ち、風待ちの良港とされ、瀬戸内海を航行する北前船や幕府の交易船など多くの船が寄港し港町として賑わいました。今も港には漁船、あるいは農船が連なり、港の先には船を導く高燈籠(再現)がそびえ、江戸時代に築かれた全長120メートルの千砂子波止が港町の風情を伝えています。
御手洗の海はとても穏やかで、とくに海が広がった南側は来島海峡大橋などの遠望が広がり、いつまでも見飽きることがありません。
その町並みを歩いていると、まるでタイムスリップしたかのような錯覚を覚えます。江戸時代の切妻造りの家屋から昭和初期のカラフルでハイカラな洋館まで、様々な時代の建物が歴史のカプセルの中にすっぽり閉じ込められているかのよう。その町並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
なかでも見どころは「若胡子屋跡」。御手洗はここに寄港する船乗りたち目当てに多くの遊女を抱える華やかな花街でもありました。若胡子屋はその最大の茶屋として知られています。現在、主屋は展示スペースですが、屋久杉が使われた豪華な造りの奥座敷が当時の華やかさを伝えています。ここには悲劇の「おはぐろ伝説」が伝えられ、胸を打たれます。
その近くの乙女座は昭和初期に当時の建築の粋を集めたモダンな劇場として造られ、昭和30年代頃までは映画館として使われていました。2002年に創建当時の姿で再建され、「花道」や、「奈落」、2階部分には「桟敷席」が設けられています。そのすぐ裏には御手洗の賑わった歴史を紹介する「江戸みなとまち展示館」があるのでチェックしてみてくださいね。
のどかな海の景色と潮風の薫り、しっとりとした町並みが醸し出す独特のスローな時間が流れる御手洗地区。心地よい時の流れに身を任せてみませんか。
(大崎下島へのアクセス)
車では広島県呉道路呉ICから安芸灘とびしま海道経由で約1時間10分
竹原港から大長港 高速船で45分