島外の高校生たちが大崎上島の「櫂伝馬」を初体験❗ | 海と日本PROJECT in 広島

手のマメにテーピングをして高校生が向かうのは・・・手漕ぎの木造船です。

大崎上島に伝わる櫂伝馬。

地区ごとのチームで争われるレース「櫂伝馬競漕」で知られています。海運業の発展を祈願して始まったとされ、200年以上の歴史があります。

この島の伝統を地元の大崎海星高校の生徒が体験する「旅する櫂伝馬」です。

初挑戦に意気込む土井健太郎さん。

高校2年の1年間を地方の学校で学ぶ「地域高2留学制度」でこの春、東京から島にやってきました。

東京から地域留学　土井健太郎さん（高校2年）
「最初は全然うまくいかなくて、櫂が水にバシャってなっちゃったりしたんですけど、李空に教えてもらってだんだん上手くなって、今はもうマメできるぐらい頑張ってます」

土井さんに教えた同級生も東京出身。高校1年から島にやってきました。

大崎海星高校2年　宮重李空さん（東京出身）
「元々、僕の地元が広島っていうのがあって、家を出たいっていう気分だった。自然があふれてて、やっぱ東京と違って自分に合ってるな」

東京出身の2人は大崎海星高校で知り合いました。
参加生徒55人が2隻に分かれ、島の中央付近の桟橋を出発します。途中で漕ぎ手を交替しながら、島の周りを時計回りに進んでいきます。

県立大崎海星高校は、島の少子高齢化に伴い生徒数は減少。2014年の当時の県教育委員会の方針で、廃校などの対象となる生徒数80人を大きく下回る年度もありました。しかし、その後V字回復し、現在は104人。

2015年度から「地域みらい留学制度」で全国から生徒を募集したのが、生徒数が増えた要因です。

北は東北から南は九州まで、48人が島外出身者です。櫂伝馬体験は、若い世代への継承とともに島の外から生徒の呼び込みを図る狙いがあります。

大崎海星高校　前田秀幸校長
「大阪の中学校で、この島で櫂伝馬体験をして良かったからということで、そのまま入学してくる子もいます。やめるわけにいかないですね」

町も寮を整備するなど、生徒の受け入れを支援しています。

大崎上島町教育委員会　佐々木智彦教育長
「幼稚園から小学校、中学校、高等学校と高等教育まで この島でできる、これがひとつの願いです」

櫂伝馬は追い風に乗って順調に進みます。

途中の中継地でひと休み。東京からの留学生、土井さんも初体験の櫂伝馬に興奮冷めやらぬ様子です。

東京から地域留学　土井健太郎さん
「すごい緊張しますね。地域の人もいっぱいいるし、自分が見られてるって思うと、より張り切っちゃうっていうか。その分でかい声出して、チームに貢献しようと思って頑張りました」

地元出身の生徒も、島外から来た生徒の櫂伝馬体験を楽しみにしています。

大崎海星高校1年　道林拓斗さん（地元・大崎上島出身）

「しんどいとは思うんじゃけど、みんな楽しみにしてくれとるし、自分もとてもうれしいです」

櫂伝馬は次の中継地に向け出発しました。
「ヨイサー、ヨイサー」

櫂伝馬は、長さ11ｍ・幅1.5m。漕ぎ手14人が、太鼓の音と「ヨイサー」の掛け声似合わせ、櫂を漕いで進みます。

先頭で後輩たちを見守る高校3年の河内ひよりさん。島根県の中学から大崎海星高校にきました。

毎年夏に開催される櫂伝馬競漕大会では、女子高校生として初めてマネージャーを務めました。

大崎海星高校3年　河内ひよりさん（島根出身）
「本番のレースの櫂伝馬競漕も見てきてるので、櫂伝馬に対してはいろいろ思い入れがあるので。これが最後かと思うとちょっと寂しいですけど、思いを持って頑張ろうかなと思ってます。がんばります！」

「旅する櫂伝馬」を企画した藤原啓志さんは、島外から来た高校生に期待しています。

「旅する櫂伝馬」実行委員会　藤原啓志会長
「夏を前に、太鼓の音を聞くとワクワクします。大崎海星高校に来たい、櫂伝馬があるから来たいっていう生徒も何人かいて、そういう子たちはね、すごい櫂伝馬に乗っとる姿が輝いてるんです」

島にきてまだ2ヶ月あまりの新1年生も参加していました。

松田果那子さんは広島市安佐北区出身、親元を離れて初めての寮生活です。

大崎海星高校1年　松田果那子さん（広島市安佐北区出身）
「最初は大丈夫かなと思った時もあったんですけど、どんどん友だちができて楽しいです」

ご両親も応援にかけつけました。

「きょう見たら楽しそうで笑顔もあって、自然の中で、これでよかったなと私も思えてうれしかったです」（母・松田那光江さん）

「この学校の生徒や先輩の雰囲気がいいっていうのをすごい感じて、やっぱり来てよかったと思いました」（父・松田勉さん）

兵庫県出身の塚田素さんは、大崎上島に来て初めて櫂伝馬を見ました。

大崎海星高校1年　塚田素さん（兵庫県出身）

「この島の人は（櫂伝馬）を大事にしている。自分の地元にもこういうのがあったらいいなって思います」

塚田さんのご両親も島を訪れました。

「きょう漕いでる姿を見て成長したなと。まだそんなに時間経ってないんですけど、一緒にいた中学生の時よりひと回り大きく成長したと感じた」（父・塚田広さん）

「寮に入らせてもらっているんですけど、すごく行政からの支援が手厚くて。とってもありがたいです」（母・塚田文さん）

大崎上島は人口7000人を切って、少子高齢化が進んでいます、島には、専門高校や中高一貫校はありますが、地元の中学生が進学する普通科の高校は大崎海星高校だけ。大崎海星高校がなくなるとフェリーで島外の高校に通わなければいけなくなります。

今後も高校生の櫂伝馬体験「旅する櫂伝馬」を続けてほしいですね。

東京から地域留学　土井健太郎さん

「すごい楽しいです。みんな元気だし、ほかの学校と違ってみんなオープンで、高い目標に向かって動いている。こっちもがんばらなきゃっていう気持ちになります！」

その思いが生徒たちの表情に出ていますね。

大崎上島は人口7000人を切って、少子高齢化が進んでいます。

島には、専門高校や中高一貫校はありますが、地元の中学生が進学する普通科の高校は大崎海星高校だけ。

大崎海星高校がなくなると、フェリーで島外の高校に通わなければいけないという状況の中で、今全国から生徒が集まっている。

いろんな刺激もある中で、みんなで一体となってやれる櫂伝馬という存在が大きいんだなと感じました。

今後も、高校生が櫂伝馬を体験する「旅する櫂伝馬」を続けていきたいとのことでした。