世界遺産の島・宮島で6年ぶりに開催された「厳島水中花火大会」🎆🎇約2500発の花火が夜空を彩る中、会場周辺の海上には約240隻のプレジャーボート🛥️もあつまりました。
広島湾の名物である「カキいかだ」との衝突事故などが懸念される中、船上からの観覧客の安全を守るため、花火開始前から奔走した海上保安官たちの活動を取材。
約30件の事故を未然に防いだ彼らの奮闘に迫ります。
10月18日に行われた厳島水中花火大会。
宮島での本格的な花火大会の開催は2019年以来で、多くの人が集まりました。
混雑していたのは陸だけではありません。会場周辺の沖合には、船上から花火を楽しもうと、プレジャーボートで溢れかえります。
花火大会が始める前から入念に準備
「警戒配備、1715から配備。花火終了の配置は…」。
花火大会当日、海上保安庁はあらかじめ、事故などに備えた警戒を計画していました。
準備は、陽が沈まないうちから始めました。
まずは、巡視艇に積まれた小さなボートのエンジンを暖めます。次は機関室に入り、発電機や巡視艇のプロペラを回す2基のエンジンを始動します。
「これから出港準備かかります。ではお願いします」
最後は操舵室で電子機器を立ち上げ、ライフジャケットやヘルメットを着用しして、準備完了です。
出港したのは、花火大会が始まる2時間以上前です。
「筏(いかだ)にぶつかって…」
これだけ警戒に力を入れるのは広島湾の特徴と関係しています。
7月に受信した実際の通報です。
◇実際の118番指令音声
―海上保安庁118番です
「もしもし、あの、ちょっといま夜走ってまして、筏(いかだ)にぶつかったんですけども、どうしたらいいでしょうか」
―おけがなどりますか?
「ケガはないです」
―船GPSは積んでますか?
「はい」
―値を読んでもろてええですか?
通報にあった「いかだ」とは、「カキいかだ」のことです。
広島が誇る名産品「カキ🦪」。
それを作る「カキいかだ」が広島湾には所狭しと並んでいます。
「海のもしも」の緊急ダイヤル118番は、日々、同様の通報を受けています。
それだけに、プレジャーボートが多数集まる花火大会は、いつも以上に警戒が必要になります。
“海上の交通整理” 約240隻を誘導
「こちらフェリー運航の妨げとなります。西側に観覧できる場所を設けております。西側への移動をお願いします」
開始直前、巡視艇から呼びかけ、プレジャーボートをフェリー運航や大会運営に支障がないエリアへと誘導します。
そして始まった花火大会。船上からも歓声があがります。
観客
「打ちあがった後に海面がすごい光って、それもきれいでした」
「(船からだと)落ち着いてみれました。楽しかったです」
花火大会が終わる直前、巡視艇が発見したのは…
花火大会が終わる直前、巡視艇があるモノを発見します。
混雑を避けるため、早めに帰港しようとしていた1隻のボートが、カキ筏に乗り上げていました。幸い乗員2人にケガはなく、油の流出もありませんでした。
午後6時45分、花火大会が終了し、一斉に移動し始めるボートを誘導します。
「この先、カキいかだがあります。不安な場合はスピードを落としてゆっくり航行してください」
最後に、周辺海域をサーチライトで捜索し、警戒は終了です。
一連の警戒や誘導により、約30件の乗り上げ事故を未然に防ぎました。
「海を通じて皆さんの安心安全を守る」
<救助訓練の様子>
もちろん、海上保安官の活動は花火大会だけではありません。
9月、海上保安官の訓練の様子を見学できるイベントが、広島市で開かれました。
参加者は、普段は海上保安大学生の実習に用いられてる「練習船いつくしま」から訓練を見学しました。
練習船いつくしま 溝口直樹船長
「広島は物流や漁業、レジャーなど、海と非常に関係が深い街になっています。海を通じて皆さんの安心安全を守ってるということを知ってもらえれば」
会場では、要救助者が浮かぶ場所までヘリコプターで急行し、要救助者を抱きかかえ潜水士ごとロープで吊り上げる救助訓練や、炎上した船の消火などを想定した放水訓練も公開されました。
広島に食やレジャーなどの恩恵をもたらす瀬戸内海。花火大会のような特別な日や、何気ない日常の裏には、広島の海を守り続けている海上保安官の姿があります。