かつて、手漕ぎの和船には不可欠だった「櫓」。
動力船が主流になったことで減少、さらに櫓自体の素材もプラスティックに。。
今や、日本国内で木製の櫓を手作りできる職人は、尾道市向島で櫓を作り続ける 瀬尾豊明さん82歳ただ一人になってしまった。
今も全国から、木製の手作り櫓を求めて、注文が相次ぐ。
これまで何人か弟子入りした人もいたが、長続きはしなかったという。
長崎市の漁師 山田富雄さん70歳も、瀬尾さんの櫓の熱烈なファンの一人。
決して安くはない手作り櫓だが、他には代えられないという。
風を見ながら櫓を漕ぎ進むスピード感が、動力船では味わえない魅力があるという。
子供のころ父から教わった憧れの櫓にこだわり続け、「これは自分の趣味だ」という。
向かい風の時には強く漕がねばならない。そんな櫓に、人生を重ねる山田さん。
孤高の職人であり続ける瀬尾さんも、最近は「あと何年続けられるか?」と自問する日々。
ただ、仕事にかける情熱は微塵も失っていない。
「
今日できることは、今日一生懸命やって」
「今日できんことは、明日できなくても仕方がない」
今日、自分にできることを精一杯取り組む—
そんな当たり前のことを当たり前にひたすら続けてきた。
日本最後の手作り櫓職人が仕事に向かうその眼はまだ輝いている。