海上自衛隊呉基地に設置される新しい部隊「自衛隊海上輸送群」。
その要員となる自衛隊員たちの訓練を取材しました。
ラッパを手に行進する自衛隊員たち。
江田島市の海上自衛隊第1術科学校で学ぶ生徒たちですが、海上自衛隊の青い迷彩服に混じって緑色の迷彩服の姿も見られます。
陸上自衛隊員です。
ラッパは旗や光とともに「合図」を送る手段として旧海軍の時代から伝統的に使われています。
吉峯陸 3等陸曹(27)
「ラッパはとても難しいですね。陸自の時は吹いてなかったので」
大内匠 3等陸曹(32)
「すごく身が引き締まる、そういう気持ちではあります」
2人は陸上自衛隊でデスクワークの経理、トラックでの輸送などをそれぞれ担当していました。
陸上自衛隊員たちは「船乗り」の教育をここでゼロから受けているといいます。
今年度末に発足する、陸・海・空共同の輸送部隊「自衛隊海上輸送群」の要員になるためです。
この日は、部隊で使う小型の輸送艦「にほんばれ」が進水式を迎えました⚓
迅速に人員や物資などを運べるほか、水深が浅い 島しょ部の港にも接岸できるといいます。
海上輸送群の発足時の体制は「にほんばれ」に別の中型輸送艦1隻を加えた2隻、およそ100人とされています。
司令部が置かれる海上自衛隊呉基地ではより実践的な「訓練」が行われています。
海上自衛隊の輸送艦「しもきた」です。
この船の中で、海上輸送群の要員となる陸上自衛隊員が勤務しています。
艦内での勤務の様子が報道陣に公開されました。
ここでも陸と海の隊員が一緒に任務に当たっています。調理室にはことし3月に着任した陸上自衛隊員がいました。
調理担当の陸自隊員
「本日のメインはハンバーグを作っています。
またサラダ、揚げ物でフライドポテトの付け合わせ、ポテトサラダ、ジェノベーゼ・スパゲティですね。
ガーリックスープ、デザートにフルーチェを用意しております」
海上では娯楽が乏しく食事がより重視されます。
鮮度が落ちやすい食材から先に使うように献立を考えることも大事だといいます。
艦橋のそばには、双眼鏡を使って見張りをする隊員の姿がありました。
窪田翔 2等陸曹(40)
「左、私の視界内に見える船の情報を艦長、航海長の方にこれを通じて伝達してるところです。海に出たらちょっと実戦感覚ってところが多くて、常にちょっと緊張感、陸自よりは高いなっていうふうには感じます」
制御室では、モニターに目を光らせエンジンなどの機械全般を管理します。
宮原啓 2等陸尉(28)
「陸上自衛隊のその輸送するっていうのとは、また根本的に違って、知識も必要になるし、新たに勉強も必要になるし」
船の操縦に欠かせない方位を読み取るのは、2等陸尉の 小泉春菜 さん、27歳。呉基地に着任して2年目です。
小泉春菜 2等陸尉(27)
「陸上自衛官がしっかり船を運航できるんだぞといったところを見せつけるわけではないですけど、国民の皆様に安心していただければ」
海上輸送群の要員になることを自ら志願したという小泉さん。その任務は決して容易ではありません。
こちらは4年前、沖縄県の宮古島に配備されたミサイル部隊です。
この宮古島を含む南西諸島は東シナ海を挟んで中国と向き合っています。
そして西の端には、中国が領海侵入を繰り返す尖閣諸島があります。
南西諸島を守ることを念頭に、防衛省は2018年、離島を奪い返すための「水陸機動団」を設けるなど抑止力を強化。
さらに、こうした人員や物資などを運ぶ機能も強めようと、自衛隊海上輸送群を設けることにしたのです。
有事の際には当然、危険を伴います。
小泉春菜 2等陸尉(27)
「不安な部分は挙げようと思えばたくさんあるんですけど、それに押しつぶされることのないようにしっかり1つひとつできることからしっかりやっていきたいと考えております」
青山高治 キャスター
「新しい部隊ということでやり甲斐もあるでしょうけど不安を口にしていましたね」
藤原大介 デスク
「南西諸島では、ことし9月に中国海軍の空母『遼寧』が沖縄県の与那国島と西表島の間の海域を航行するなど、中国による領海侵犯や領空侵犯が相次いでいます。
こうした中で偶発的な衝突が起きる可能性も懸念されています。
そうした有事の際の輸送は日本の国防の最前線にほかならないと思います」
中根夕希 キャスター
「海上輸送群は最終的にどのような体制になるのでしょうか?」
藤原大介 デスク
「海上輸送群は呉基地に司令部を置いて、今年度末に2隻・およそ100人の体制で発足します。
そして、人員は来年度末までに阪神基地を含めおよそ160人に、艦船は2027年度までにあわせて10隻に増える予定です。
陸上自衛隊は『その後の改編の予定は検討中』としています。
部隊がさらに増強されれば、『複合防衛拠点』の計画がある、日本製鉄呉地区の跡地が活用される可能性もあります」